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【考察・レビュー】悪人/その先へ THE BACK HORN【音楽】

first written 2017/4/10

 

※もし購入しようとされる方がいるのであれば一応説明。この2曲が気に入ったのならアルバム『運命開花』を購入した方が良いと思う。というのもどちらともそのアルバムに入っているから、今更シングルというのは流石に重度のファン*1にしかおすすめできない。 私が本記事でプッシュしているMVもアルバムの方についてる。

 

■前書き

 多分、ファンになった後、THE BACK HORNの中で一番発売にわくわくしてたシングル。*2

 というのも、このシングルは『悪人』と『その先へ』の両面のシングルであり、そして、そのどちらともにMVが存在していて、公式がそのMVの一部を公開していたのだ。

 そして、『その先へ』のMVのカッコよさが半端ではなかった。

 

 久々に曲を聴いてその時の情熱を思い出したので書く。

 

■目次

 

■内容

 レビューしていく。今回はアルバムではないのであまり深い考察にはならないと思うが、私なりの考察も。多分、ずっと「ここがすごい!」と言っていると思う。

 そして『路地裏のメビウスリング』はまだよくわかっていないので例によって触れない事とする。

 

『その先へ』 菅波栄純

・レビューと考察

 『悪人』は万人受けしないのでこっちから。このシングルが発売されたときもコンビニとかでは『その先へ』の方しか流れてなかったような気がする。逆に言えば、この曲は珍しくキャッチ―な曲。

 

 はまったきっかけは映像なので、まずは映像を見てほしい。とにかくかっこいい。

 という事で公式のMV。ちょっと注意することがあって、このMVの構成はこんな感じになっている。

 ・1番(00:00~01:44)

 ・特典映像(01:45~02:38)

 ・2番サビ前から最後(02:38~)

とりあえず今回は特典映像は飛ばしていい。というか、流れが崩れるので飛ばすことを推奨する。

 

 と思ったらFULLの方も公式が公開しているらしい。ということでそちらのリンクを貼ることにする。

gyao.yahoo.co.jp

 

 

 何度でもいうが、すごくかっこいい。個人的に「これぞTHE BACK HORN」という感じがする。(どの曲でも言っている気がするけど)

 

 レビューに入る。時系列的にレビューしていく。

 

  Vo.の山田さんが火を見つめながらつぶやく歌いだし、

 "とりあえず全部ぶっ壊そう"

 もうかっこいい以外になんとも言えない。

 そして、この曲は彼ら自身の振り返りの曲でもあるらしく*3そういった意味でも、「歌いだし」、つまり「初めての言葉」がこれというのは、『人間プログラム』というおどろおどろしい名アルバムを作成した「初期衝動」を如実に表していているなあと思った。

 

 次の場面。

 "空白をにぎりしめて"

 と歌う所でそれまで火を眺めていた山田さんがちらっとこっちを見る。

 ライブやライブ映像を見ていて、常々「山田さんは眼力がすごいなあ」と思っていたのだが、ここの部分でそれが確信に変わった。まるで獰猛な獣のようなこの眼力。思わずドキッとした。

 

 この後、暗闇で燃え盛る火をバックにメンバーが演奏するシーンが入る。

 私がイメージするこのバンドというのは「暗闇の中の光」という感じがしていて、その点において燃え盛る火の中で演奏するというこの構図というのはすごくしっくりくる。

 そして、それぞれの演奏姿勢というのも特徴があっていい。

 栄純はまるで楽しさの権化みたいに暴れるし、山田さんは大地に根差している大樹のごとく雄大に静かにたたずんでいる。女将は高難易度のフレーズを鮮やかにそして妖艶に弾きあげていて、松田さんはいつも通りマイペースに楽しそう。*4

 

 そして、それに見惚れていると、急にそれまで荒々しかった音楽が静かになって、

 ”イメージは 咲く花”

 という山田さんの切なげな歌声が紡がれる。

 このバンドの曲というのは不思議なもので、同じ曲内で"人に言えないこともやった"など非道徳的な歌詞を歌ったかと思えば、このように急に優しいフレーズを歌う事もあるのだが、それら要素が上手く成立しているのだ。

 そして、その優しさというは押しつけがましいものではなく、確かに”咲く花”のようであると思う。個人的に今まではっきりしていなかった彼らの魅力というのが明文化されたような気がする歌詞である。

 

 そしてサビ。

 "鳴らせ君の声"

 この強烈なフレーズと共に、それまで静かにたたずんでいた山田さんが、その全身を使って「君の声」、つまり「自身の表現をしよう!」と訴えかけてくる。そして、”共に行こう”とこちらに手を伸ばしてくる。

 

 その強烈なメッセージ性は、"生きていく その意思を"という言葉でいったん締めくくられて、ギターの特徴的な高音と共に2番メロへ突入する。

 

 ここでは「嫉妬」、「ステージへ立つ恐怖」、「下を見て安心する自身の弱さ」。そんな苦悩を歌い上げている。 

 今でこそアルバムが出たらオリコンにランクインするのを見かけるが、基本的に非道徳的歌詞を含むことが多いので一般向けに大々的に宣伝できるTV露出、つまり「大衆に認識される機会」というのは極端に少なく、だからこそ売れなかった時期もあったと思うし、方向性とか結構真剣に向き合っていたのではないかと思う。『運命複雑骨折』とか『ペルソナ』とかの歌詞を見ると本当にそう思う。*5

 そして、そんな中を生き抜いて駆け抜けてきた彼らなりの言葉がこれだ。

 "踏み出すんだ たった一歩"

 ”俺が倒れたならば 屍を越えていくんだ 全てを今懸けよう”

 "拳は振り上げて 心を解き放て"

 

 この情熱的な言葉を歌い上げた後、四人が並んで立っている映像に切り替わる。チープな花火が打ちあがる様は、本当はシュールなはずなのだが、この適当さというのもなんだか彼ららしくって凄くエモい。

 そして、山田さんが地面を力強く指さして、

 ”始まりはいつだって ここからさ”

 と歌い上げた後、四人が彼は誰時の闇の中を歩いていく。そこから朝日が四人を照らす様は本当に「始まり」という感じがする。

 

 この後は朝日の中で疾走するかの如くラスサビを演奏していくのだが、もうそのすべてのシーンが私に熱い炎をくれる。

 特に"生きていく その意思を"で突き上げた腕を下ろしていくところとか、そのあとのドラムの音と共に全員が揺れるところとか最高にエモい。本当にこの曲はかっこよすぎる。

 

・まとめ

 個人的にTHE BACK HORNの魅力の1つ「生きる衝動、情熱」を詰め込んだかのような夢の楽曲であると思う。歌詞を見てもこれまでの楽曲で表現されていた言葉の再編*6が多くみられ、そういった意味でも彼らなりに「このバンドの魅力とは」という事を整理してまとめた一曲なんじゃないかなあと感じた。

 そして、それは私にはすごく響いた。是非一度聴いてほしい。

 

『悪人』 菅波栄純

・レビューと考察

 この曲の魅力はMVで発揮されると感じる。というのもMVを見終わった後というのは映画を一本丸々見た後のような満足感みたいなものがあるからだ。

 ちなみにこの曲も公式からMVが出ている。これも面白い感じにひねくれていて「FULLだけど無音」である。MVだけ見てもよくわからないと思うのでリンクは貼らない。

 と思っていたのだが、どうやら公式が公開しているやつがまだあった。期間限定かと思っていた。という事でリンクを貼る。

gyao.yahoo.co.jp

(余談だが、MVが正式に手に入れられるようになったのは、アルバム『運命開花』が出た後なので、それまではCD音源と映像を自分でくっつけて楽しんでいた。多分、これも彼らの狙いである気がしている)

 

 「映画を見終わった」といえば、この少し前には『光の音色』という熊谷監督とTHE BACK HORNによる映画があった。昔のMVなどを見ると、彼らは映像を使った表現というものにも挑戦しようとしている節を感じられるので、先の映画で得たノウハウを活かしての本作『悪人』が生まれたんじゃなかろうかと私は考えている。

 一応『光の音色』公式サイトを張っておく。「一応」という修飾子をつけたのは、この映画、結構ファン向けで、この映画で使われている楽曲の歌詞の流れを自分なりに掴んでおかないと面白さが分からないと思う。逆に言えば、わかる人は最初の曲が流れ出す瞬間に、もう最高に高まると思う。*7

www.hikarine.com

 

 

 話がそれた。曲の話に戻る。

 「映画を見た気分になった」という感想が出てきたのは、この曲にストーリーらしきものがあるからだ。1曲の中でここまで展開が変わるのかと驚かされるほど場面の切り替わりがある。

 そして、そのストーリーの顛末はとにかくつらい。『ファイティングマンブルース』のような世間のしがらみによるつらさではなく、自責のつらさだ。というのも、『その先へ』が"THE BACK HORNの生きる衝動をまとめた曲"であるのなら、『悪人』は"THE BACK HORNの罪悪感、後悔といった人間の弱さに向き合ったものをまとめた曲"であると思うからだ。

 カラオケで歌う事があるのだが、一発でその場の雰囲気や気持ちをやるせないものに変えるので相当な負の力を持った曲だと思う。

 

 特に”有罪”からの

 ”わかってる”

 はすごい。ここまで葛藤の感情を引き出す流れは見事としか言いようがない。

 

 映像としては、彼らが影絵となって歌詞に沿った場面に応じて色々な役を演じていたり、演奏していたりする。前半の演劇は歌詞の悲壮感さの割にコミカルなネタが多く、メイキング映像でもめちゃくちゃ楽しそうに作品を作っていたので、そのギャップがすごい。

 この系統のユーモアさ本当に好き。特にエンドロールの「THE BACK HORN」づくしにはやられた。色々と笑うしかない。個人的に演劇の中では「無敵の男」の場面と「イッっちゃった集団」のテロップの狂気さが大好き。

 

 で、サビから後半は段々とストーリー性が見えてきて、その映像に引き込まれる。

 

 演奏シーンについては、好きなシーンがたくさんあるので箇条書きにする。

・最初の無音のところから、ギターの特徴的なリフと共に栄純が暴れ狂うシーン

・4人が横に並んで演奏しているシーン(ここからも各人の特徴が分かるのでおもしろい)

・”重力よさらば”以後のシーン全て。特に山田さんのパフォーマンス

・”忘れたくないなあ”の前あたりの女将。フレーズも相まってエロい

・最後に青い幕が開けるシーン

 

・まとめ

 前述のように曲や歌詞単体では、"THE BACK HORNの罪悪感、後悔といった人間の弱さに向き合ったものをまとめた曲"となっていると思う。

 それに映像が加わると、彼らのユーモアさや、世界観へのより深い没入感を味わえる。そういった意味で、『その先へ』とはまた違った彼らの魅力というものが詰め込まれた曲であると思う。

 

 ■シングルまとめ

 映像を含めるとこれ以上ないってくらいの高評価。

 映像に関して、彼らも精神的余裕が出てきたのか、本当に楽しんで作っていたようであるし、音楽や歌詞に関しても彼らのそれまでの魅力を抽出したかのような楽曲である。そういうところから、個人的に最高傑作ともいえるんじゃないかと思ってる。

  ぜひ一度聴いてみてほしい。それではまらなくとも数か月後に聴いてみてほしい。きっとはまるから。

 

 

 

*1:B面ほしい、特典映像欲しい

*2:まあ、『リヴスコール』が出る前くらい辺りにファンになったのでちと微妙だが

*3:THE BACK HORN「悪人 / その先へ」特集 菅波栄純ソロインタビュー (3/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

*4:別に松田さんについて、手を抜いているわけではない。松田さんはいつもなんか楽しげなのだ。『戦う君よ』とか、この2番のMV見てるとシュールさを持ち合わせているのかなと思う。

*5:個人的には、売れるのはいいけど、メディア露出はあまりしてほしくない。というのも彼らは批判に対して真摯に向き合うような気がするから、疲れてしまうのではないかと思うのだ。まあ、老婆心かもしれないが…。というかそんなところも魅力に感じている自分もいるのだが…

*6:"君のポケットに残っていた"→『雨』、”踏み出すんだ たった一歩”→『ラピスラズリ』みたいな

*7:あの場面での『月光』。やっぱりそういう曲だったかと思った